WindRosesEngei / ウィンドローズ園芸株式会社

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2023.03.17

バラと自然樹形

デュセスダングレーム Duchesse d’Angouleme

私は植物のもつ自然な樹形というものが好きです。

バラに対してもその気持ちは変わらず自然樹形への憧れのような気持ちがあります。
しかしバラというものはどちらかといえば樹形があるようで無いような特殊な植物とも言えます。
それが何故かは分かりませんが、どんな場所でも生きていけるようにはっきりとした明確な形を持たなかったのかもしれません。
とはいえ、バラは日の光が一日中当たるような場所で育てれば木の大きさや伸び方は様々ですが、こんもりとした自然な樹形に育ちます。そして風を受けて揺れる枝は引き締まって伸びすぎない気がします。逆に日陰では、ひょろひょろと伸び日の光を求め他の木に寄りかかり枝を伸ばしていきます。ですから、日当たりによっても樹形はかなり変わってしまいます。

それとは別にバラの交配の目的が花の美しさの追及のために行われてきたこともバラの樹形をより複雑にしてしまったことの原因である気もしています。例えば、切り花をとるためのバラは切り花として美しければ樹形など気にしなくてもいいように。基本的に花の美しさが目的で樹形のことはあまり考えてこられなかったことで、自然な樹形で管理するには難しいバラが増えてしまったと考えています。

私としては原種バラやオールドローズの自然樹形を皆さんにどんどんお勧めしたい気持ちは強いのですが、本当のことを言うと日本の一般の家庭で自然な樹形を楽しむというのは難しいのかもしれません。

しかも、私は庭の中に支柱的なものを持ち込みたくないという気持ちが強いので余計に難しさを感じています。可能であればユキヤナギやヤマブキのようになんの支えもなく存在させることが出来たらと思ってしまいます。
支柱が嫌ならハイブリッドティーやフロリバンダ、ブッシュ状になるイングリッシュローズなどの枝の硬い品種を植えればいいと考えられるかも知れませんが。
私的には冬に枝先をブツブツと切るということが何となく腑に落ちないのです。

もともと庭師であるということもあると思いますが、庭師が扱う普通の植木は自然な枝先を残しながら切り戻していきます。そうすることで冬も美しい枝ぶりを楽しむことが出来ます。私は枝先にこそ植物の詩的な美しさや情緒が宿るような気がしています。
だから、枝先を切るとその枝の美しさが消えてなくなってしまうような感覚に襲われます。
花のことだけを考えるならそんなことを考えなくてもいいのでしょうが。

私がここで言いたいことはあくまで一季咲の原種やオールドローズが対象になります。
四季咲きバラの枝先は必ず花が付きますので花が終わったあとに花柄含め2~3芽下で、結局切ることになります、返り咲きのバラも基本的には同じことが言えます。誤解のないように繰り返しますが、あくまで一季咲きの品種のことを言っています。

このようなバラを美しく剪定する方法についてはあまり語られることはない気がしています。わたしが参考にしている本をご紹介します。

鈴木満男  著 (2007/10/13) 『バラを美しく咲かせる とっておきの栽培テクニック 』
                     NHK趣味の園芸ガーデニング21

思い起こしてみても私はこの本以外で日本において明確に原種ばらの剪定について解説している本は見たことがありません。この本の中で鈴木満男さんが写真付きで解説されている原種バラの剪定方法を私は参考にしています。
この本は私の大好きなバラの解説書で、皆さんにもぜひ読んでみてほしいと思っています。
著者の経験から語られる分かりやすく的確な説明とバラへの愛が感じられる素晴らしい解説書です。

今回はそこに私の経験を織り交ぜて私の剪定方法をご紹介したいと思います。
私自身迷いもありますが今はこんな方法を試しているということをお伝えします。

今回取り上げる品種は原種バラではなくオールドローズ、
ガリカローズのデュセスダングレームです。
私の知るガリカローズはすべて一季咲きで枝は柔らかく扱いやすいものが多いです。
そして株元からの枝の立ち上がりの数が多い気がします。
ガリカローズのすべてがこの剪定方法に当てはまるとは思いませんが自然樹形で楽しめるすべてのバラに応用できるのではないかと思っています。

剪定前
剪定後

写真をみていただければ私がどんな剪定をしているのか分かって頂けると思いますが。
簡単に説明すると、まず古くなり垂れている枝を根元から切り取り、側枝も根元から切り取るような剪定方法です。枝を途中から切るようなことはしないようにしています。
側枝を切ることで開花位置がシュートと同じようにつくことを意識しています。
しかしながら、側枝を残せばそこからも花は咲きますので枝の込み具合やバランスをみてある程度、側枝をのこす方がいいかもしれません。
それと、私の経験上、古い枝を抜き過ぎない方がいいと思っています。新しいシュートばかりにしてしまうと風で枝が動きやすくなります、風通しがいいことはいいのですが、枝位置が定まらず開花期に樹形が乱れやすい気がしています。写真の剪定は古い枝を切りすぎた気がしました。もう少し垂れたような枝を残しても良かったかもしれません。ちょっと難しいかもしれませんが、新しいシュートが古い枝に乗ることで株としてのまとまりがでるのだと考えられます。

開花状態の写真も載せていますが開花期は花の重みで自然に枝が垂れます。
ガリカローズは枝が柔らかいため蕾が出来てくると自然と枝先が垂れてきて頂芽優勢が崩れると私は考えています。枝先に芽数が多いのも自分で頂芽優勢を崩すためのような気もしています。
開花のときに花の重みで垂れ下がっていた枝も開花が終わると自然に枝は少し上がり、中心部からシュートもあがり自然にこんもりと仕上がります。
健全な状態であれば古い枝と同じくらいの数のシュートが上がってくると思います。
ですが、こんもりと仕上がるためには日当たりが重要です。
一日日があたるようなところでないとこんもりとは仕上がらないと思います。
それと欲を言うなら1~2m程、高い位置に植えて垂れる花を下から見る場所に植えることが出来たら最高です。
ガリカローズは花弁数の多いものが多く開花期には平らな場所に植えると枝が地面にべったりとついてしまいます。高い位置に植えることで自然に風に揺れる枝を楽しむことが出来るのです。

今回ご紹介したように実際はバラを自然樹形で楽しむためには、品種選びや、植える場所などよく考える必要があります。しかしながらそこには何物にも代えがたい美しさがあると思っています。日本でそんな風景が見ることが出来る場所、そして枝先の美しさを感じとれる人が増えてほしいというのが、庭師出身の私の願いです。